これは機械翻訳された記事です。原文は英語です。
最も深刻な水危機を抱える国々には、海水淡水化の設備がほとんどない。大規模な淡水化は1960年代から存在し、これらの国々にも繰り返し売り込まれてきたが、その経済性がこれらの国々で成り立ったことは一度もない。イエメン、エチオピア、パキスタン、そしてサハラ以南アフリカの大部分は、深刻で、しかも悪化し続ける水不足に直面している。これらの国々を合わせても、世界の淡水化能力のごくわずかしか持っていない。イエメンの港湾都市アデンでは、サウジアラビアの資金による海水淡水化プラントがまだ準備段階にあり、内陸国のエチオピアには実質的に一つもない。技術が届く場所と危機のある場所は、ほとんど重なっていない。
これが、淡水化を世界の水不足への答えとみなすことの根本的な問題である。この技術には、地球規模の問題を解決する輝かしい切り札という評判がある。だが、そのプラントが建つのは資本と海岸線が出会う場所であり、その隔たりは技術ではなく経済の問題である。それ以外のすべての人々に届くはずの解決策も実行されていないが、その理由もまた、技術とは何の関係もない。
淡水化とは何か、何ができるのか、そして計算はどこで破綻するのか
淡水化には二つの方式がある。海水を高圧で半透膜に押し通す逆浸透と呼ばれる方法と、海水を加熱して蒸発させ、生じた蒸気を凝縮させる方法で、いずれも真水と塩分を分離する。どちらの方式も技術的には成熟しており、どちらも大規模に商業運転されている。
湾岸諸国は淡水化で成り立っている。クウェート、カタール、バーレーンは飲料水の約90%以上を、サウジアラビアは約70%を淡水化に頼っている。イスラエルでは、地中海沿岸に並ぶ大型の海水淡水化プラントが飲料水のおよそ80%を生産しており、これは2022年に供給された淡水全体の約3分の1にあたる。6番目のプラントであるソレク2は2025年に送水を始め、イスラエル水資源庁の長期予測では、淡水化能力は2022年の年間約6億立方メートルから2050年には約17億立方メートルへと、ほぼ3倍に増える。これらは設計どおりに機能している、大規模な稼働中のシステムである。淡水化が世界の水危機を解決できるかどうかは、経済の問題である。
第一の限界はエネルギーである。逆浸透で海水から1立方メートルの真水をつくるには約3〜4キロワット時が必要で、最先端のプラントでも理想的な条件下で約2.5 kWh/m³である。河川水や湖水の従来の浄水処理に要するのは、およそ0.2〜0.6 kWh/m³にすぎない。淡水化は、生産する水の単位量あたりおよそ5〜20倍のエネルギーを使う。その差は大きく、どこまで縮められるかは物理法則が制約している。海水の淡水化には、約1 kWh/m³という熱力学的な下限がある。
これを世界全体の消費量の規模に照らしてみる。世界の年間淡水取水量は約4000立方キロメートルに達し、そのうち農業だけで約2800 km³を占める。世界の農業用水需要のうち意味のある割合を淡水化した水で置き換えるだけでも、必要な規模では存在しないエネルギーが要る。将来の効率改善によって物理法則が定める限界を取り除くことはできず、その限界は直接的かつ恒久的な経済的帰結をもたらす。太陽光発電がいずれこの規模での淡水化を可能にするという議論は、技術的には筋が通っているが、助けになるには遅すぎる。必要な規模で太陽光と淡水化の両方のインフラを建設する資本コストは、水ストレスを抱える低所得国にとって依然として手の届かない水準にあり、いま枯渇しつつある帯水層には、その移行が実現するまでの数十年の猶予はない。
第二は、もう一方の端から出てくるものである。淡水化は真水1リットルをつくるごとに、約1.5リットルの高塩分の濃縮塩水(ブライン)を生み出す――塩分濃度が海水の最大約2倍に達する濃縮水で、塩素やスケール防止剤といった処理薬品の残留物や、銅などの金属を微量に含んでいる。2019年の推計では、世界の淡水化プラントはこのブラインを1日あたり約1億4200万立方メートル排出していた。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタールの4カ国で、その55%を占める。
その大半は海に戻される。排出口付近での局所的な生態系への影響は記録されている。高塩分で、しばしば周囲より温かい排水の帯は、溶存酸素を低下させ、海底の生物や海草藻場のような繊細な生息環境にストレスを与え、銅などの金属の濃度を高めることがある。世界の海水淡水化能力のおよそ半分に囲まれたペルシャ湾は、こうした影響が集中する場所である。あるモデルでは、アラビア半島沿岸に沿った湾の南西部で、ブラインによって塩分が1キログラムあたり最大約4グラム上昇するとされている。湾全体を対象とした別の研究によれば、2050年までに予測される能力の増加を織り込んでも、淡水化による塩分の上昇は湾の自然な変動の範囲に十分収まる。ただしその著者たちは、これがあくまで湾全体を単位とした評価であり、個々のプラントの周辺で何が起きているかについてはさらなる研究が必要だと明言している。内陸部の淡水化は、性質は異なるが同じく深刻なブライン処分の問題を抱えている。近くに海がないため、ブラインは地下に圧入するか、高価な遮水シート張りの池で蒸発させるか、輸送しなければならず、そのいずれも安価ではなく、環境に無害でもない。内陸では、ブラインの処分は代償を払わなければ解決できず、海岸から離れた場所で淡水化を試みれば、どこであれ実際のコストを大きく押し上げる。適切に計上すれば、淡水化の経済的な総コストには、こうした下流の環境コストも含まれるが、淡水化された水の価格に現れるのはそのごく一部にすぎない。
第三は資本である。大規模な逆浸透プラントの建設には数億ドルから10億ドル超がかかり、加えて相当な運転コストが継続的に発生する。水危機が最も深刻なイエメン、エチオピア、パキスタン、サハラ以南アフリカの広い地域は、このインフラが求める規模と条件で資本を調達できない。イエメンのアデンで準備中の海水淡水化プラントでさえ、サウジアラビアの開発資金に依存している。湾岸諸国、イスラエル、オーストラリア、スペイン、カリフォルニア沿岸部は調達できる。そしてこれらの国や地域は淡水化を、すでに機能している水システムを補うために使っている。
この技術の恩恵は、圧倒的に水に困っていない人々のもとへ流れる。エネルギーと排出口周辺の環境破壊というコストは、より広く分散される。そして、安全に管理された飲料水をいまだ利用できない世界の21億人には、ほとんど届いていない。淡水化が工業規模で稼働してきた60年間、それはずっと変わらなかった。時間と投資を重ねれば解消される普及の遅れとみなすには、あまりに長い。
70パーセントの問題
農業は、世界で取水される淡水全体の約70%を使っている。自給的農業や商業的な灌漑が中心を占める多くの貧しい国では、その割合は90%以上に達し、アフガニスタン、マリ、ネパール、ソマリア、スーダンでは約95%に上る。これに対して、世界中の淡水化プラントをすべて合わせ、1日あたり約1億立方メートルの能力をフル稼働させたとしても、年間の生産量は40 km³に満たない。農業の取水量の1〜2%をまかなうのがやっとである。
世界で最も一般的な灌漑方法は、いまだに湛水灌漑である。水を畝間や水路に流し、畑一面にあふれさせる方法である。利用できる方法のなかで、これほど効率の悪いものはない。水は作物の列のあいだを流れ、日差しで蒸発し、植物が吸い上げられない根域の下まで浸み込んでしまう。湛水灌漑の典型的な適用効率は約40〜60%で、施した水のおよそ半分は作物の根に届かない。もっとも、その一部は下流の河川や帯水層に浸み戻る。点滴灌漑は、チューブとエミッターを通じて根域に直接水を送るもので、85〜90%の効率を達成する。この技術は実験段階のものではない。商業的に入手でき、何十年もの歴史がある。普及を阻んでいるのはコストである。点滴灌漑システムは設置にも維持にも費用がかかるため、農家がそれを導入するのは高価値作物の場合か、水が乏しく価格がついている場合であり、水が無料の場所で導入されることはまれである。
湛水灌漑がなくならないのは、世界の大半で農業用水が系統的に無料か、無料同然だからである。水に価格がない、あるいは名目的な価格しかないとき、効率化に投資する主な経済的動機は消えてしまう。畑に水を流し続ける農家は、自分が直面するインセンティブに合理的に反応しているのである。
補助金は大きく、しかもその大半は人目につかない。カリフォルニア州の農業部門は、州内で開発・管理されている水供給の約80%を消費しており、環境用水を含めた州全体の水利用で見ても約40%を占める。それでいて州のGDPへの寄与は約2%にとどまる。この水の多くは、米国開拓局が建設・運営する連邦のインフラを通って運ばれる。開拓局はこれまで、全コストのごく一部にすぎない価格で農業利用者に水を供給してきた。環境ワーキング・グループの試算では、2002年にセントラル・バレー・プロジェクトから供給された灌漑用水の平均価格は、ロサンゼルスの住民が飲料水に払う額の2%未満だった。プロジェクトの農家が受け取った補助金の総額は、その年に彼らが水の代金として払った約4800万ドルを上回っていたという。開拓局の事業に属する灌漑農家は、1902年の制度発足以来、建設費の自己負担分を無利子で返済してきた。そして1996年までに、灌漑農家に割り当てられた71億ドルの建設費の約半分が、他の負担者、主に水力発電の顧客に転嫁されていた。
同じ力学は、各地の政治的な取り決めに合わせて形を変えながら、世界中で働いている。補助金付きの灌漑は、帯水層を枯渇させるか河川の流れを変えなければ支えきれない地域で、水を大量に使う作物の生産を促している。中央アジアでは、ソ連時代に始まった綿花のための灌漑事業がソ連崩壊後の政府にも引き継がれ、アラル海を崩壊させた。かつて地球で4番目に大きな湖だったアラル海は、いまでは大部分が塩の平原と化し、深刻な健康被害の現場となっている。パキスタンでは水の乏しいパンジャーブ州とシンド州で稲作が行われ、インダス川水系が持続的に供給できる量を超えるペースで水を消費している。アーモンドとピスタチオは、輸出額でカリフォルニア州最大級の農産物に数えられる。どちらも一年中水を必要とする多年生作物であり、ほとんど砂漠のような土地で、希少性に見合う価値をはるかに下回る価格の水を使って栽培されている。
解決策は、理屈の上では単純である。農業用水に実際の希少性価値かそれに近い価格をつけ、その収入で、より効率的なシステムに切り替える小規模農家や自給農家への移行支援をまかない、貧しい小規模農家は、市場価格を一律に下回る価格設定ではなく、消費量に連動した的を絞った補助金で守る。すでにこの方向に動いた政府もある。イスラエルは、水不足の圧力に絶えずさらされるなかで、農家に水の実際のコストに近い料金を課し、厳格に運用される割当によって使用量に上限を設けてきた――イスラエルの農家は自分たちの水道料金がOECDで最も高いと不満を漏らしており、2025年の水法改正はその一部を引き下げている。オーストラリアもマレー・ダーリング川流域で同じことを行った。不完全で中途半端ではあるが、成果は数字に表れている。
政治的な障害は、ほとんどの民主主義体制において、農業関係の有権者層が不釣り合いに大きな力を持っていることである。農村票は議会で構造的に過大に代表され、農業ロビーは潤沢な資金を持つ。水を大量に使う大規模経営のビジネスモデルは安い水を前提に組み立てられており、改革はそのモデルを直接脅かす。
農業用水の改革は、作物の選択にも及ぶ。乾燥地で水を大量に使う作物を育てることの経済的な合理性は、安い水に大きく依存している。水に正しく価格をつければ、ウズベキスタンの綿花も、フレズノ郡のアーモンドも、シンド州のコメも採算が変わり、市場が何を栽培するかを調整する。
残りの水にも価格を
農業用水は群を抜いて大きな梃子だが、価格設定の誤りという問題は水利用全体に及んでいる。都市の家庭用水、工業用水、商業用の消費は、世界の大半で系統的に安すぎる価格に置かれ、予想どおりの過剰使用を招いている。コストがゼロかそれに近い資源は、価格の精査に耐えられないような使われ方をする。砂漠の都市の芝生、洗車場、水を浪費する工業工程、水ストレスを抱える地域のホテルのプールがそうである。
水の価格設定に対する標準的な政治的反論は、それが人権を否定するというものであり、その議論には一理ある。飲用、調理、基本的な衛生のための最低限の量の水を利用することは人権であり、貧しい世帯から基本的な水を奪うような価格体系は不当である。
しかし実際には、この議論は主に大口の水消費者が自らの補助金を守るために掲げる政治的な盾となっている。貧しい世帯が使う水の量はささやかである。飲用、調理、手洗いには1人1日約20リットルで足りることが多く、敷地内に蛇口のある世帯は通常約50リットルを使う。正しい価格設定のもとで水道料金が最も上がるのは、裕福な家庭の利用者、商業施設、そして何よりも、すでに述べた農業関係者である。農業ロビー、ゴルフ場の経営者、工業利用者が価格改革に反対して水に対する人権を持ち出すとき、彼らが主に守っているのは自給農家や都市の貧困層のアクセスではなく、安い水への自分たち自身のアクセスである。
この反論に応える政策設計は、すでに実行され、記録されている。南アフリカの無償基本水政策(Free Basic Water)は、アパルトヘイト後の政府による公共サービス提供の公約の一環として2001年に導入された。各世帯に毎月最初の6000リットルを無料で提供する。これは基本的な飲用、調理、衛生に足りる量である。その基準を超える分には段階的に上がる逓増型のブロック料金を課し、大量に使う者ほど単位あたり多く支払う仕組みである。その狙いははっきりしていた。水をほとんど使わない貧しい世帯は何も払わず、大量に使う者は実際の価格を払う、というものである。実施は不完全だった。時がたつにつれ、財政難の自治体は無料枠を登録された貧困世帯に限定し、流量制限装置によってそれを徹底させるようになった。ツワネでは、無料枠をまかなうための急勾配のブロック料金が、一部の低所得世帯の状況をかえって悪化させうる。それでも、無料または安価なライフライン・ブロックの上に段階的に高い価格を設定するという基本設計は実行可能であり、その変形版は他の地域にも存在する。チリは1989年に成立した法律に基づいて低所得世帯の水道料金を補助しており、ベルギーのフランデレン地域は1997年から制度が廃止される2016年まで、すべての住民に年間15立方メートルの水を無料で提供していた。
ライフライン料金が反対される場所では、反対しているのはたいてい産業、農業、高所得の家庭消費者であり、この反論が守ると称する貧しい世帯が主に反対しているわけではない。南アフリカでは、無料枠への圧力はコスト回収を優先する自治体から来ており、それに頼るタウンシップの住民から来ているのではない。カリフォルニアでは、数十年にわたって水価格改革を阻んできた農業ロビーが、広報では小さな家族経営農家を引き合いに出しながら、実際には補助金付きの料金で年間数十万エーカーフィートを消費する経営体を代表している。
帯水層のなかの危機
地下水の枯渇は、人目につかないところで進行する水の非常事態である。世界の主要な帯水層は、前例がなく、均衡点もない速度で汲み上げられている。米国グレートプレーンズの地下にあるオガララ帯水層は、米国で灌漑に使われる地下水全体のおよそ30%を供給している。テキサス州南部ハイプレーンズ一帯では、降雨による帯水層の涵養は平均して年に約1センチにすぎず、この地域に点在するプラヤ湖のあいだでは涵養はほぼゼロである。カンザス州西部とテキサス州パンハンドル地域では、地下水位が年に1〜3フィート下がるのが普通である。帯水層の一部の地域では、第二次世界大戦後に大規模な揚水が始まって以来、水位が100フィート以上低下した。本格的な揚水が始まってから2015年までに、帯水層は約2億7300万エーカーフィートの貯留水を失った。コロラド川の自然流量のおよそ18年分にあたる。
華北平原の帯水層は、数億人を養う小麦とトウモロコシの生産を灌漑しており、被害の規模と、そこからの出口の両方を示している。帯水層は容赦なく汲み上げられてきた。北京市、天津市、河北省、山西省を含む広い華北地域では、2003年から2010年にかけて年に約8 km³の地下水が失われていた。その後、中国は数十万本の井戸を閉鎖し、揚水を制限し、南から水を導いた。すると傾向は逆転した。2020年以降、平原全体の地下水位は年に約0.7メートル上昇し、2024年には2005年の水準を上回るまでに回復した。インドとパキスタンにまたがるパンジャーブ地方の地下の主要な帯水層系は、かつての華北と同じ種類の苦境にある。この地域では数十年にわたり、巨大な規模の稲作と小麦栽培が地下水の汲み上げに頼ってきた。ガバナンスの手が入っていない場所ではどこでも、こうした地域ごとの問題が積み重なり、数千年をかけて蓄えられた水が同時に、しかも大規模に失われ、数十年という時間尺度で清算されつつある。
管理されていない地下水の経済学は、コモンズの悲劇そのものである。個々の農家には、隣人より先にできるだけ多く汲み上げる合理的な動機がある。帯水層に残った水は誰でも使える。個人にとって合理的な戦略、つまりいま汲み上げることが、集団としては枯渇という破滅的な結果を生む。地質学的な時間をかけて涵養される化石帯水層にとって、枯渇は事実上永久である。オガララ帯水層の一部で汲み上げられた分を補うには、数百年から数千年分の降雨が必要になる。
淡水化とのつながりを見ると、主流の政策対応がいかにずれているかがわかる。米国西部や中東の一部では、農業による汲み上げで帯水層を枯渇させているまさにその地域で、淡水化プラントが建設され、あるいは真剣に提案されている。淡水化が都市に飲料水を供給する一方で、農業は足元の共有の帯水層を干上がらせ続ける。利用できるなかで最も資本集約的で、最もエネルギー集約的な水の解決策が、症状である都市の水不足に対して投入され、根本原因である価格のつかない農業の地下水汲み上げは、ほとんど歯止めなく続く。そのため、高価な解決策と共有資源の清算が、並行して進んでいる。
地下水枯渇への答えはガバナンスである。持続可能な揚水量に基づく汲み上げ制限、監視のためのインフラ、実効性のある水利権改革、そして帯水層の水位が下がったときに配分を削減する実質的な権限を持つ機関である。どれも新しい技術を必要としない。難しいのは、現在の汲み上げ者たちの利害を覆すことである。彼らは、この問題が最も重大な意味を持つ地域で、大きな経済的・政治的力を握っている。
オーストラリアのマレー・ダーリング川流域は帯水層ではなく河川系だが、政府が本腰を入れたとき、共有の水資源の本格的なガバナンスがどのようなものになるかを示している。2000年代までに、この河川系は深刻な過剰配分に陥っていた。水系が持続的に供給できる以上の水量について灌漑許可が発行されていたのである。そのため、ミレニアム干ばつのあいだ、マレー川の河口は8年間にわたって浚渫によって開けておかなければならず、流域の生態系は衰退していることが記録されていた。マレー・ダーリング流域計画は2012年11月に法制化され、水利権を取引できる既存の市場に加えて、取水に対する義務的な上限を課した。計画を支えたのは連邦政府の129億豪ドル規模の「未来のための水」計画で、そのうち31億豪ドルは売却を望む者から灌漑用水の権利を買い取るために、58億豪ドルはより効率的な灌漑インフラへの補助に充てられた。当初の目標は、3000〜4000ギガリットルの水を環境用水に戻すことだった。農業界からの長年の圧力を経て、法定された数値はそれを下回る2750ギガリットルとなり、さらに450ギガリットルを効率化事業によって確保することとされた。数値はその後も調整されている。
2015年、政府は灌漑農家や全国農業者連盟をはじめとする農業団体のロビー活動を受けて、水の買い戻しに1500ギガリットルの上限を設けた。以来、計画は争いの的となり、訴訟にさらされ、下方修正されてきた。2023年12月には河川回復法(Restoring Our Rivers Act)が買い戻しの上限を撤廃して回復期限を延長し、マレー・ダーリング流域庁による計画の初の本格的な法定見直しは2026年に予定されている。同時にこの計画は、主要な共有水系を、自由に取水できる資源ではなく管理されたコモンズとして扱おうとした、政府による数少ない試みでもある。そして、環境用水が戻された区間では、河川の生態系の状態にははっきりと改善が確認されている。成功物語とは言いがたいその歴史は、本格的なガバナンスに何が必要かを示している。強力な農業関係者との長年にわたる対立、政治的な後退、そして不完全な実施である。
なぜ誤った答えが建設され続けるのか
淡水化が政府や開発銀行、インフラ投資家から資金を得るのは、政治的に安上がりだからである。淡水化は誰からも水を奪わずに新たな水の供給を生み出す。農業用水の価格改革も、地下水の汲み上げ制限も、水を大量に使う強力な利害集団との対決も必要ない。政治家は、本当の解決策が求める闘いを経ることなく、水問題の解決策を発表し、新しいプラントのテープカットができる。
この構図は国際開発金融にも及んでいる。多国間開発銀行や二国間援助プログラムは、水ストレスを抱える途上国の淡水化事業に多額の資本を振り向けてきた。その一方で、同じ地域の農業用水の価格は改革されず、地下水のガバナンスは弱いままである。理由はありふれたものである。淡水化プラントは、コストが明確で、成果(1日あたりの立方メートル数)が測定でき、開発金融機関が理解できる融資の枠組みを持つ資本プロジェクトである。それはエンジニアリング契約を生み、その受注先はしばしば援助国の企業である。ガバナンス改革は、農業用水の価格の見直しであれ、地下水の汲み上げ制限の設定であれ、水利権制度の構築と執行であれ、そうした特徴をほとんど持たない。固定資本向けの融資として組むことはできず、テープカットの式典も生まれない。何十年にもわたる持続的な制度的関与を必要とし、政治的なつてを持つ利害集団からの反対を招く。開発金融の言葉で言えば、同じ意味での融資の対象にはならないのである。こうして善意の資金はプラントへと向かい、プラントでは代わりにならない改革は待たされ続ける。
水危機はガバナンスの失敗である。その失敗があまりに長く続き、誤診することが政治的にあまりに都合がよかったために、いまでは技術の欠如のような顔をしている。解決策は知られており、経済的に筋が通っている。そして、十分な圧力のもとでそれを実行した地域では効果を上げてきた。イスラエルは淡水化能力と並行して本格的な水のガバナンスを築いた。実質的な農業用水の価格設定、大規模な下水の再利用(イスラエルは処理済み下水の80%以上を農業に再利用しており、その割合は世界で最も高い)、そして需要の管理である。オーストラリアのマレー・ダーリング改革は、その限界はあるにせよ、世界の過剰配分された河川系の大半で試みられてきたどんな施策よりも野心的である。シンガポールは、必要な量の雨を集められず、長らくマレーシアからパイプで送られる水に頼ってきた小さな島国だが、「四つの国家の蛇口」と呼ばれる戦略を築いた。地元の集水域、輸入水、淡水化、そしてNEWaterと名づけられた高度処理再生水の四つで、NEWaterはいまや国内需要の最大40%をまかなえる。これに組み合わせたのが段階的な料金体系で、家庭が月40立方メートルを超えて使うと、1立方メートルあたりの料金が高くなる。
イスラエルとオーストラリアで本格的なガバナンス改革が実現したのは、政治的により容易な選択肢が目に見えて失敗し、改革の政治的コストが改革なしに続けるコストを下回ったときだった。
世界の大半は、いまだ容易な選択肢を使い果たしている途中である。帯水層が尽きる前にガバナンス改革が訪れるかどうかは、水に正しい価格がつけられたときにどの利害集団が力を失うのか、そして先送りのコストを負う人々、主に将来の水利用者が、現在の仕組みから利益を得ている人々に対抗して組織化できるかどうかにかかっている。それまでは、海岸沿いにプラントが建ち続け、その背後で地下水位は下がり続けるだろう。
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メディア
逆浸透方式の海水淡水化プラント – Wikipedia(James Grellier)
主な出典と参考文献
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Access to water
WHO/UNICEF Joint Monitoring Programme (26 August 2025). 1 in 4 people globally still lack access to safe drinking water (2.1 billion people lack safely managed drinking water). https://www.who.int/news/item/26-08-2025-1-in-4-people-globally-still-lack-access-to-safe-drinking-water—who–unicef
World Health Organization (2020). Domestic water quantity, service level and health, 2nd edition (about 20 L/person/day often sufficient for drinking, cooking, food hygiene and handwashing; about 50 L/person/day with one tap on-plot). https://www.who.int/publications/i/item/9789240015241
Agriculture and irrigation
FAO (2012). FAO Statistical Yearbook 2012: World Food and Agriculture, Part 4 (Sustainability dimensions), “Water” (3,941 km³ withdrawn in 2005; agriculture about 70%). https://www.fao.org/4/i2490e/i2490e04b.pdf
FAO AQUASTAT. Water use: methodology. https://www.fao.org/aquastat/en/overview/methodology/water-use/
UNESCO (2024). United Nations World Water Development Report 2024. https://www.unesco.org/reports/wwdr/en/2024/s
UN News (12 December 2025). UN sounds alarm over rising demands on water resources as scarcity increases (agriculture about 72% of withdrawals; 95% in Afghanistan, Lao PDR, Mali, Nepal, Somalia and Sudan). https://news.un.org/en/story/2025/12/1166582
Water Footprint Calculator. Why All Farms Don’t Use Drip Irrigation (flood irrigation loses about 50% of water applied; drip can be expensive to install and operate). https://watercalculator.org/footprint/farmers-use-drip-irrigation/
FAO. Irrigation Water Management: Irrigation Methods, chapter 6, Drip irrigation (“Generally only high value crops are considered because of the high capital costs”). https://www.fao.org/4/S8684E/s8684e07.htm
Bali, K. (2016). Irrigation methods and efficiencies (drip 85–90%). California Department of Food and Agriculture, FREP conference presentation. https://www.cdfa.ca.gov/is/ffldrs/frep/pdfs/2016FREPPresentations/1-8BaliIrrigationETMethods.pdf
Jägermeyr, J. et al. (2015). Water savings potentials of irrigation systems: global simulation of processes and linkages. Hydrology and Earth System Sciences, 19, 3073–3091. https://hess.copernicus.org/articles/19/3073/2015/
Public Policy Institute of California. Water Use in California’s Agriculture (about 40% of statewide water use and 80% of human water use; about 2% of state GDP). https://www.ppic.org/publication/water-use-in-californias-agriculture/
Simon, E. (6 May 2015). With urban water use in California cut, agriculture regulations scrutinized. ABC News. https://abcnews.com/US/california-water-rules-leave-agriculture/story?id=30843208
Environmental Working Group (December 2004). California Water Subsidies. https://www.ewg.org/research/california-water-subsidies
US General Accounting Office (1996). Bureau of Reclamation: Information on Allocation and Repayment of Costs of Constructing Water Projects (RCED-96-109). https://www.govinfo.gov/content/pkg/GAOREPORTS-RCED-96-109/html/GAOREPORTS-RCED-96-109.htm
Micklin, P. (2007). The Aral Sea Disaster. Annual Review of Earth and Planetary Sciences, 35, 47–72. https://doi.org/10.1146/annurev.earth.35.031306.140120
NASA Earth Observatory. The Aral Sea before the streams ran dry. https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/the-aral-sea-before-the-streams-ran-dry-77193
California Department of Food and Agriculture. California Agricultural Exports 2024–2025. https://www.cdfa.ca.gov/Statistics/PDFs/2024-2025_california_agricultural_exports.pdf
Times of Israel (3 April 2025). Government amends Water Law to cut price for farmers. https://www.timesofisrael.com/government-amends-water-law-to-cut-price-for-farmers/
OECD (2010). OECD Review of Agricultural Policies: Israel 2010. https://doi.org/10.1787/9789264079397-en
Water pricing and lifeline tariffs
Szabó, A., University of Houston Center for Economic Growth and Opportunity. The value of free water: Analyzing South Africa’s Free Basic Water Policy (6 kl per household per month free since 2001; in Tshwane, the high unit prices needed to fund the free allowance “unintentionally hurt” low-income households). https://www.uh.edu/class/economics/cego/research/economic-development/water-project/study-one/
Scheba, S. (15 October 2022). South African “Free Basic Water” policy: from progressive to regressive agenda? Water Alternatives blog. https://www.water-alternatives.org/index.php/blog/fbw
Republic of Chile (1989). Ley 18.778, que establece subsidio al pago de consumo de agua potable y servicio de alcantarillado de aguas servidas (FAOLEX text). https://faolex.fao.org/docs/pdf/chi180333.pdf
Belgian Court of Arbitration (1998). Judgment 36/1998 on the Flemish decree of 20 December 1996 (free supply of 15 m³ per person per year from 1 January 1997). https://nl.const-court.be/public/n/1998/1998-036n.pdf
De Watergroep (January 2016). Een nieuwe waterfactuur voor huishoudelijke klanten (the free 15 m³ ended on 1 January 2016). https://www.dewatergroep.be/-/media/de-watergroep/drinkwater/tarieven-en-facturatie/folder-een-nieuwe-waterfactuur-voor-huishoudelijke-klantenpdf.pdf · https://corporate.dewatergroep.be/en/drinking-water/the-flemish-water-bill-explained
Groundwater
McGuire, V.L. (2017). Water-level and recoverable water in storage changes, High Plains aquifer, predevelopment to 2015 and 2013–15. US Geological Survey Scientific Investigations Report 2017-5040 (about 175,000 square miles in eight states; storage down about 273.2 million acre-feet since predevelopment). https://pubs.usgs.gov/publication/sir20175040
Dennehy, K.F., Litke, D.W. and McMahon, P.B. (2002). The High Plains Aquifer, USA: groundwater development and sustainability (about 30% of the nation’s groundwater used for irrigation). US Geological Survey. https://pubs.usgs.gov/publication/70024629
Wood, W.W. and Sanford, W.E. (1995). Chemical and isotopic methods for quantifying ground-water recharge in a regional, semiarid environment (Southern High Plains recharge about 11 mm a year). Ground Water, 33(3), 458–468, doi:10.1111/j.1745-6584.1995.tb00302.x. https://www.usgs.gov/publications/chemical-and-isotopic-methods-quantifying-ground-water-recharge-a-regional-semiarid
Texas Water Development Board. Southern Ogallala groundwater availability model, report appendices (recharge between playas). https://www.twdb.texas.gov/groundwater/models/gam/ogll_s/OGLL_S_Report_Appendices.pdf
Texas A&M AgriLife, Ogallala Aquifer Program (water-level declines of 1 to 3 feet per year). https://ogallala.tamu.edu/?p=301
TreeFlow. The first reconstruction of streamflow for Lees Ferry (natural flow record of the Colorado River averaged 15.0 million acre-feet a year to 1975). https://www.treeflow.info/node/28
Feng, W. et al. (2013). Evaluation of groundwater depletion in North China using the Gravity Recovery and Climate Experiment (GRACE) data and ground-based measurements. Water Resources Research, 49(4), 2110–2118 (8.3 ± 1.1 km³ a year in 2003–2010 across about 370,000 km² of Beijing, Tianjin, Hebei and Shanxi). https://doi.org/10.1002/wrcr.20192
China Daily (1 March 2023). Nation reverses major decline in northern groundwater levels (279,000 wells closed). https://mobile.chinadaily.com.cn/html5/2023-03/01/content_004_63fe6497ed5071e117b53949.htm
Long, D. et al. (2020). South-to-North Water Diversion stabilizing Beijing’s groundwater levels. Nature Communications, 11, 3665 (doi:10.1038/s41467-020-17428-6). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7374106/
Long, D. et al. (2025). Unprecedented large-scale aquifer recovery through human intervention. Nature Communications, 16, 7296 (North China Plain groundwater levels rising about 0.7 m a year since 2020, above 2005 levels by 2024). https://www.nature.com/articles/s41467-025-62719-5
Nature (2009). Satellite data show Indian water stocks shrinking. https://www.nature.com/articles/460789a
The Murray-Darling Basin
Government of South Australia, Department for Environment and Water. Millennium Drought (the Murray Mouth almost closed in 2002, triggering round-the-clock dredging for the following eight years). https://www.environment.sa.gov.au/topics/water-and-river-murray/basin-river-murray-lakes-and-the-coorong/river-murray-droughts/millennium-drought
Wheeler, S.A. (27 February 2023). Water buybacks are back on the table in the Murray-Darling Basin. Here’s a refresher on how they work. Global Water Forum (republished from The Conversation). https://globalwaterforum.org/2023/02/27/water-buybacks-are-back-on-the-table-in-the-murray-darling-basin-heres-a-refresher-on-how-they-work/
Senate Environment and Communications References Committee, Parliament of Australia. Chapter 3: Water buybacks and infrastructure investment (Water for the Future: A$3.1 billion for purchasing water entitlements, A$5.8 billion for irrigation infrastructure). https://www.aph.gov.au/Parliamentary_Business/Committees/Senate/Environment_and_Communications/Completed_inquiries/2010-13/waterlicences/report/c03
Senate Rural and Regional Affairs and Transport References Committee, Parliament of Australia. Inquiry into the management of the Murray-Darling Basin, chapter 5 (Restoring the Balance buyback, A$3.1 billion over 10 years; A$5.8 billion infrastructure programme). https://www.aph.gov.au/Parliamentary_Business/Committees/Senate/Rural_and_Regional_Affairs_and_Transport/Completed_inquiries/2008-10/murray_darling/report/c05
Quiggin, J. (1 December 2011). Sausages, legislation and the Draft Basin Plan (2,750 GL against the 3,000 to 4,000 GL suggested in the 2010 Guide as the minimum for a sustainable outcome). https://johnquiggin.com/2011/12/01/sausages-legislation-and-the-draft-basin-plan/
National Farmers’ Federation (2015). Farmers stress importance of legislating cap on water buybacks. https://nff.org.au/media-release/farmers-stress-importance-of-legislating-cap-on-water-buybacks/
Parliament of Australia (2023). Water Amendment (Restoring Our Rivers) Bill 2023 (repeals the statutory 1,500 GL cap on Commonwealth water purchases; extends deadlines). https://www.aph.gov.au/Parliamentary_Business/Bills_LEGislation/Bills_Search_Results/Result?bId=r7076
Government of South Australia, Department for Environment and Water. Basin Plan (2,750 GL plus a further 450 GL, a package equivalent to 3,200 GL; Restoring Our Rivers Act commenced 7 December 2023; first full review of the Basin Plan due in 2026). https://www.environment.sa.gov.au/topics/water-and-river-murray/projects-plans-security-and-legislation/legislation-and-policies/basin-plan
Australian Water Association. MDBA report shows plan aims have “a long way to go” (positive local-scale environmental outcomes where environmental water was delivered). https://www.awa.asn.au/resources/latest-news/environment/natural-environment/mdba-report-shows-plan-aims-have-a-long-way-to-go
The Conversation (23 April 2019). Australia’s ‘watergate’: here’s what taxpayers need to know about water buybacks. https://theconversation.com/australias-watergate-heres-what-taxpayers-need-to-know-about-water-buybacks-115838
Development finance, Israel and Singapore
International Finance Corporation. Aqaba-Amman Water Desalination & Conveyance (AAWDC), project disclosure. https://disclosures.ifc.org/project-detail/SII/47924/aqaba-amman-water-desalination-conveyance-aawdc
Haaretz (23 March 2015), via York University Middle East Environment archive. Israeli wastewater policy continues to pay off (85.6% of wastewater reused, the highest rate in the world). https://mideastenvironment.apps01.yorku.ca/2015/03/israeli-wastewater-policy-continues-to-pay-off-haaretz/
GovTech / McClatchy (24 March 2014). Desalination in Israel means robust water resilience (more than 80% of wastewater treated and recycled, mainly for agriculture). https://www.govtech.com/fs/desalination-in-israel-means-robust-water-resilience-.html
PUB, Singapore’s National Water Agency. Our Water Story (the four national taps: local catchment, imported water, NEWater and desalinated water). https://www.pub.gov.sg/Public/WaterLoop/OurWaterStory
WaterTechOnline. WaterTechOnline interviews Harry Seah, PUB (two-thirds of Singapore’s land area is water catchment; 17 reservoirs). https://watertechonline.com/watertechonline-interviews-harry-seah
Water & Wastes Digest (26 January 2017). Singapore opens fifth NEWater plant (enough NEWater capacity to meet up to 40% of total daily water demand). https://www.wwdmag.com/wastewater-treatment/news/10935243/singapore-opens-fifth-newater-plant
PUB (September 2023). Water price to rise from April 2024; Government to provide support (domestic tariffs for 0–40 m³ and above 40 m³ a month). https://www.pub.gov.sg/Resources/News-Room/PressReleases/2023/09/Water-price-to-rise-from-April-2024-Government-to-provide-support
Tortajada, C. (2006). Water Management in Singapore. International Journal of Water Resources Development, 22(2), 227–240. https://doi.org/10.1080/07900620600691944












