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要点
8月、米財務省は30年債を額面100ドルあたり約98.63ドルで売った。10月には、同じ約束で得られたのは約92.89ドルだった。需要は強かった。貸し手がより多くを求めただけであり、豊かな国々の長期利回りは軒並み数年ぶりの高水準に達した。米国の数字は、デフォルトへの恐れもインフレの暴走も示していない。あるモデルは、10年債利回りの上昇の大半を、予想される短期金利によるものとしている。政府債務がGDPの約63%のドイツでさえ、利回りは2011年以来の高水準をつけた。満期を迎えた債務がより高い金利で借り換えられるにつれ、利払いは4年で世界のGDPの2%から3%近くへと増えた。

2026年8月13日、米財務省は新しい30年債を発行した。償還日は2056年8月15日で、入札で決まった表面利率(クーポン)は5.125%である。額面100ドルにつき、政府はそれまで毎年5.125ドルを支払い、最後に100ドルを返すと約束したことになる。買い手が受け入れた利回りは5.216%で、これにより価格は債券100ドルあたり約98.63ドルに決まった。

財務省は9月10日に同じ債券を利回り5.308%で追加発行し、10月8日にも5.618%で発行した。クーポンは変えられなかった。8月の時点で債券に書き込まれていたからである。譲れるものとして残っていたのは価格だけだった。10月の入札で、価格は額面100ドルあたり約92.89ドルに決まった。政府はまったく同じ約束を3度したが、そのたびに手にする金額は減っていった。

債券の利回りとは、価格に織り込まれた年間の収益率である。決まった支払いの流れに対してその価格を払い、満期まで持ち続けた買い手が得るものだ。同じクーポンに対して額面より安く払えば、収益率は上がる。買い手は2056年に100ドル全額を受け取ることに変わりはないからである。だから価格と利回りは逆方向に動き、利回りがクーポンを上回るということは、価格が100ドルを下回るということになる。

入札そのものは順調だった。10月8日の応札額は、発行額220億ドルの2.54倍に達した。間接入札者(ディーラーや、直接入札する別の会社を通じて入札する顧客を指す財務省の分類)は発行額の72.3%を落札し、過去10回の入札の平均68%を上回った。この利回りなら、ワシントンに30年間資金を預けようという貸し手に事欠くことはなかった。ただ、その見返りをはるかに多く求めたのである。2020年8月13日、財務省は30年債を利回り1.406%で発行していた。10月の数字のおよそ4分の1である。

米国債だけではなかった。米10年債利回りは10月5日に5.31%で引け、2002年5月以来の高い終値をつけた。翌日には日本の30年債利回りが過去最高の4.168%で引け、10月第1週には英国の30年物国債(ギルト債)の利回りが1998年以来初めて6%を超えた。ドイツのピークはそれより少し早かった。9月28日、ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)のイールドカーブで見た10年債利回りが、2011年以来の高水準に達したのである。国際通貨基金(IMF)の見立てでは、G7全体の10年債利回りの平均は2月から9月までに1パーセントポイントを超えて上昇し、20年近くで最も高い水準になった。家計にとって、この数字は住宅ローンに表れる。米国の30年固定金利の平均は10月22日に7.32%で、1年前は6.19%だった。世界の政府債務は2025年に世界の総生産の94%近くに相当し、IMFの予測では2029年までに100%に達する勢いである。

では、その30年債に上乗せされた4パーセントポイントは、いったい何の対価なのか。

長期利回りは何でできているか

政府に10年、30年と貸すことは、もっと単純な選択肢と競い合うことになる。数カ月ずつ貸して、それを借り換えていくやり方である。短期金利は、ほぼ中央銀行が決める。だから、どんな長期利回りでも、その第1の構成要素は、償還までの期間に投資家が予想する短期金利の平均である。翌日物金利が今後10年間の平均で約4%になると考えるなら、利回り3%の10年債は割に合わない。ほかの条件が同じなら、その価格は、利回りがその水準に近づくまで下がっていく。

第2の構成要素はタームプレミアムである。長期債を持つリスクに対して投資家が求める上乗せ利回りだ。30年間資金を縛りつければ、その間に何が起きても受け入れるしかない。インフレが跳ね上がるかもしれず、中央銀行が誰の予想も超えて利上げするかもしれず、ほかの買い手が離れていくかもしれない。そのどれが起きても、すでに買った債券の価格は下がる。そうしたリスクが大きく感じられるとき、貸し手はその対価を求める。長期債が品薄なとき、あるいは暴落への保険として重宝されるとき、プレミアムは縮小し、マイナスになることさえある。

どちらの構成要素も、取引画面には表示されない。市場が提示するのは利回りであり、予想金利とプレミアムの内訳はモデルで推計するしかない。そしてモデル同士の答えは食い違うことがある。短期利回りは、中央銀行が今後1〜2年に何をすると予想されるかに最も強く反応する。長期利回りにもその予想は含まれるが、はるかに長い年数にわたって広がっており、そこに待つことの対価として投資家が求めるプレミアムが加わる。

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同じ利回りを別の角度から切り分ける方法もある。物価連動国債を使うのである。米国ではTIPSと呼ばれ、クーポンと元本の支払いが消費者物価指数に連動して変わる。その利回りは実質利回り、つまりインフレ調整後の収益率である。通常の国債の利回りと、同じ年限のTIPSの利回りとの差を、ブレークイーブン・インフレ率という。これはインフレ補償の市場指標であって、物価の行方について投資家が何を予想しているかをそのまま読み取れるものではない。インフレが予想外に振れるリスクに対するプレミアムを含んでおり、またTIPSは通常の米国債ほど取引しやすくないため、価格がゆがむからである。それでも、利回りが急上昇する一方でブレークイーブン・インフレ率がほとんど動かなければ、その上昇は実質利回りを通じて起きたことになる。

それぞれの国に固有の事情が、この両方の構成要素に影響する。どれだけ借金を抱えているか、政治がどう動くか、誰がその国債を買うのか、中央銀行が何をしているか。同じ1年がベルリン、ロンドン、東京をこれほど違う形で扱った理由は、そこにある。

米国の証拠

衝撃は湾岸から来た。米国・イスラエルとイランの戦争が2月に始まり、3月9日には原油が1バレル115ドルを大きく上回るなかで、世界中で債券が売られた。戦時には国債が避難先になるのが常だが、このときはその魅力が顧みられなかった。投資家は、中央銀行が高金利をより長く続けざるを得なくなるか、利上げを迫られることを恐れたのである。「今日はむしろパニックモードに近い」と、ロンドンにあるラボバンクの金利ストラテジスト、リン・グレアム=テイラーはその日語った。

インフレはやって来た。米国の消費者物価は9月までの12カ月間に3.7%上昇し、エネルギー指数は20.4%上がった。9月16日、米連邦準備理事会(FRB)は政策金利を0.25ポイント引き上げて3.75〜4%の範囲とした。2023年以来の利上げである。「インフレは高止まりしている」と声明は述べ、見通しを提出した18人の当局者のうち16人がさらなる利上げを予想していた。欧州中央銀行(ECB)は6月と9月に預金ファシリティ金利を引き上げており、日本銀行は政策金利を1995年以来の高水準となる1.25%に引き上げた。

芝生と中央の歩道の奥に建つ、左右対称の白い大理石のファサードをもつ連邦準備制度のエクルズ・ビル。雲の浮かぶ青空の下
ワシントンD.C.にある連邦準備制度のエクルズ・ビル、2011年

米10年債利回りを2通りに読むと、上昇がどこから来たのかが見えてくる。さらにモデルを使えば、それをもう一段細かく分けられる。1つ目の読み方が最も単純である。戦争直前の2月27日、10年債利回りは3.97%で引けた。10月23日には5.00%だった。同じ期間に10年物の実質利回りは1.72%から2.66%へと上昇し、上昇幅のほぼすべてを占めた。一方、ブレークイーブン・インフレ率は2.25%から2.34%になっただけだった。今後10年間のインフレ補償はほとんど変わっていない。上乗せされた利回りのほぼすべては、インフレ調整後の収益率の上昇だったのである。

2つ目の読み方はFRB自身のスタッフによるもので、別の手法を使っている。9月の会合に先立つ数週間を振り返ったスタッフは、近い将来のインフレ補償が主に原油とともに上昇し、それが短めの年限の利回り上昇の大半を占めたことを見いだした。長めの年限の利回り上昇の大半を占めたのは実質金利だった。インフレ補償は上昇した後でも、インフレがFRBの目標である2%に戻ることと整合的な水準にとどまっていた。

予想金利とプレミアムの内訳は、ニューヨーク連銀が管理するタームプレミアム・モデルから得られる。その推計によれば、モデルが当てはめた10年債利回りは、2月27日から、プレミアムがピークをつけた10月7日までに1.24ポイント上昇した。そのうち約0.85ポイントは予想短期金利の上昇によるもので、約0.39ポイントがタームプレミアムによるものだった。つまり上昇幅のおよそ3分の1は、リスクに対する上乗せの対価だったことになる。10月7日のプレミアムは0.98ポイントで、2014年6月以来の高さだった。その後、プレミアムは低下に転じた。10月22日にはモデルの値は0.64で、2月下旬の0.59に近づいていたが、予想金利の部分はまったく動いていなかった。

低下の一部は、たった1日で起きた。10月22日、人工知能関連の取引への懸念から株式が急落し、投資家は米国債に戻った。10年債利回りは17ベーシスポイント(1ベーシスポイントは1パーセントポイントの100分の1)を超える下げで4.972%となった。「久しぶりに、米国債が安全資産としての地位を享受している」と、カタリスト・ファンズの債券ポートフォリオ・マネジャー、ラリー・ホルツェンターラーは語った。モデルでは、その日の低下は2つの構成要素にほぼ均等に分かれた。予想金利から8ベーシスポイントほど、プレミアムから8ベーシスポイントである。

イールドカーブの形状も、これと符合する。2月下旬から10月23日までに、2年債利回りは1.31ポイント、10年債は1.03ポイント、30年債は0.69ポイント上昇した。最も大きく上がったのは短期の利回りである。中央銀行が今後1〜2年に何をするかを市場が織り込み直すときには、そうなるものだ。

これらすべてと整合する筋書きは2つある。1つは、原油発のインフレを抑え込むために中央銀行が高金利をより長く続けると市場が予想している、というものだ。もう1つは、FRBのマーケット・デスクも描いたもので、データが「底堅い経済と根強いインフレ」を指し示している、というものである。FRBの9月の議事要旨に記録された市場の論評は、タームプレミアムを押し上げたほかの要因も挙げていた。地政学、財務省の国債買い戻しプログラムをめぐる不確実性、そしてAIインフラ建設のための巨額の借り入れとの資本の奪い合いである。いずれにせよ、米国の数字は、投資家がデフォルトを恐れて政府から逃げ出している様子も、インフレの暴走に身構えている様子も示していない。ニューヨーク連銀のモデルでは、2月以降の10年債利回り上昇の大半は、短期金利の予想経路によるものである。これは1つの国、1つの年限についての話であり、その内訳自体もモデルに依拠している。

戻ってきたプレミアム

2026年のプレミアムの急上昇は、もっとゆっくりとした変化の上に乗っている。ニューヨーク連銀のモデルでは、10年物のタームプレミアムは2018年、2019年、2020年、2022年のすべての取引日でマイナスであり、2021年、2023年、2024年もほとんどの日でゼロを下回っていた。2020年3月9日にはマイナス1.66ポイントまで下がった。これが最低値である。投資家は、今後10年間に予想される短期金利なら得られたはずの見返りよりも少ない見返りで10年債を受け入れていた。事実上、保有する特権のためにお金を払っていたのである。マイナスのプレミアムは、マイナスの利回りとは違う。その日も10年債の利回りは0.54%あった。マイナス利回りはよそで起きていた。同じ日、ドイツの10年債利回りはマイナス0.85%だった。貸し手がベルリンに10年間お金を預かってもらうために、代金を払っていたということである。2025年と、2026年の10月22日まで、米国のプレミアムは毎日プラスだった。

経済学者は利回りをどう分解するか

タームプレミアムを取引する市場は存在しない。FRBのあるノートは、この問題を率直に述べている。予想金利とプレミアムの内訳は「市場価格から直接推測することはできない」ため、計量経済モデルで推計するしかない、と。ニューヨーク連銀のモデルはトビアス・エイドリアン、リチャード・クランプ、エマニュエル・メンヒが構築したもので、2008年に初めて公表され、2013年に改訂された。3段階の線形回帰を用いて米国債のイールドカーブ全体を価格づけし、投資家が予想する短期金利の経路を推計して、利回りの残りをプレミアムとみなす。ほかのモデルは別の道筋をたどる。FRB独自のキム=ライト・モデルは、短期金利に関する専門家の予測の調査も取り込んでいる。先のノートによれば、その長期年限の推計値とニューヨーク連銀の推計値は「時に大きく異なることがある」といい、その主な原因はそうした調査にある。単一のモデルを読む賢明なやり方は、方向と転換点を見ることであり、それをモデルに依存しない証拠と突き合わせることである。たとえば、2026年の上昇を実質金利とインフレ補償に分けたFRBスタッフの分析がそれにあたる。

マイナスのプレミアムが続いた年月には、ある背景があった。中央銀行が膨大な国債を抱えていたのである。イングランド銀行は2009年から2021年にかけて、数次にわたる量的緩和で8950億ポンドのポンド建て債務を買い入れた。そのほぼすべてがギルト債で、量的緩和の狙いの一部は長期金利を低く抑えることにあった。2026年6月末の時点でも、日本銀行は日本国債全体の46.7%を保有していた。

そのいずれもが、それぞれのやり方で手を引きつつある。イングランド銀行は2022年11月1日にギルト債の売却を始め、2026年9月には売却を6カ月間停止し、長期ギルト債の売却を完全に取りやめた。日銀は長期国債の月間買入れ額を2027年初めまで四半期ごとに約2000億円ずつ減らしており、掲げる原則は「長期金利は金融市場において形成されることが基本」というものである。FRBは再び保有を増やしてきているが、対象は短期の債券に限られる。9月に改めて示されたFRBへの指示は、準備預金を潤沢に保つために短期国債(Tビル)を、必要なら残存期間3年以下の中期国債を買い入れ、保有する米国債はすべて満期ごとに再投資するというものだ。10月21日までの1週間、通常の中期・長期国債の保有額は約3.6兆ドルで、1年前より399億ドル多いにすぎなかった。

その一方で、政府は借り入れを増やしている。ドイツは2026年に連邦政府の借り入れが過去最高になると見込んでいる。米財務省は8月、定例の中期・長期国債の入札規模を少なくとも今後数四半期は据え置き、追加の資金需要は短期国債で賄う計画だと表明した。これにより、新たな借り入れは短期にとどまる。

モデルはプレミアムの大きさを示せても、その原因までは示せない。原因については、それぞれの見立てがあるだけだ。10月14日に公表されたIMFの見解は、主要先進国では高い債務水準、歳出圧力、大量の国債発行の見通しが、長期債を保有するために投資家が求める利回りを押し上げている、というものである。同じ週、IMFのアタナシオス・バンバキディスは、「インフレ圧力、財政の不均衡、そして各国政府による、さらに民間部門からもますます増えている大量発行を背景に」ソブリン債の利回りが上昇していると警告した。

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同じ嵐、異なる被害

債務だけが利回りを動かすのなら、ドイツは穏やかな1年を過ごしていたはずだ。2025年のドイツの政府債務はGDPの約63%だった。英国は102%、米国は124%、日本は207%である。それでもブンデスバンクのイールドカーブで測ったドイツの10年債利回りは、9月28日に3.69%に達し、2011年4月以来の高水準となった。これは債務水準だけに基づくあらゆる説明にとって不利な材料だが、単一の世界的な原因を証明するものでもない。ドイツの債務管理機関は、連邦政府の借り入れが2026年に過去最高の5255億ユーロに達し、2027年にはさらに増えると見込んでおり、連邦政府は財政政策の拡張局面にあるとしている。IMFは、投資と防衛の財源を賄うため、ドイツの債務が2031年までにGDPの74%近くまで増えると予測している。さらにドイツはユーロで借り入れており、ユーロの金利は1999年以来ECBが決めている。ECBは2026年に2度、利上げした。

英国はほかの多くの国より大きな打撃を受けた。戦争が始まって以降、英国の借り入れコストは他の大半の欧州諸国の政府よりも急激に上昇した。暖房と発電を天然ガスに頼っていることが懸念されたためである。10月初め、投資家はイングランド銀行が11月か12月に利上げすると予想していた。実現すれば、戦争が始まって以来初めての利上げとなる。迫りくる予算案が、2つ目の懸念材料となった。10月6日、ジョン・ヒーリー財務相は、10月28日の自身初の予算案を前に市場の空気を探るため、英国債のプライマリーディーラーであるギルト債マーケットメーカー各社のエコノミストと会談した。英財務省は後に、ヒーリーが「厳しい世界経済環境のなかでの財政の信認の重要性を強調した」と発表した。翌日、30年物ギルト債の利回りは13ベーシスポイント跳ね上がり、1998年1月以来の高水準となった。

巨大な石柱のあいだにはめ込まれた、イングランド銀行入り口の重厚な暗色の扉
ロンドンのシティにあるイングランド銀行の入り口、2025年9月
2022年、英国で何が壊れたのか

英国の確定給付型年金基金は、負債連動型投資(LDI)戦略を用いていた。借り入れによって、自己資金で買える以上の長期ギルト債を保有できるようにする戦略で、損失を吸収するためのクッションが設けられていた。2022年9月23日、政府は拡張的な財政パッケージ、いわゆる「ミニ予算」を発表し、長期ギルト債の利回りはその日だけで30ベーシスポイント上昇した。9月27日には、30年物の利回りが朝から夕方までに67ベーシスポイント上昇した。2000年までさかのぼるデータで、それまでの1日の最大上昇幅は29ベーシスポイントだった。この動きは多くのLDIファンドでクッションを超えるおそれがあり、ファンドは下落する市場でギルト債を売るか、年金制度に追加の現金を求めるしかなかった。売るたびに価格はさらに下がり、さらなる売りを強いられる。イングランド銀行はこの悪循環を「自己強化的」と表現した。9月28日、同行は長期ギルト債市場に介入した。1983年に「債券自警団(ボンド・ビジランテ)」という言葉を生み出したエド・ヤルデニは、それを一文で定義している。「財政当局と金融当局が経済を律しないのなら、債券投資家が律することになる」。2022年の英国には、その両方があった。ミニ予算をめぐる売りが起き、売却を迫られたレバレッジ投資家がそれを大幅に悪化させたのである。

イングランド銀行もまた、説明を迫られてきた。9月17日に長期ギルト債の売却をやめると、長期ギルト債の価格は急反発した。同行のアンドリュー・ベイリーは、この変更が市場環境の悪化への対応だという見方を否定した。同行は、売却のペースが主に左右するのは損失がいつ政府に降りかかるかであって、その大きさではないと主張している。ヒーリーの予算案は10月28日に示される予定で、FRBが次の金融政策決定を発表する予定の日と重なる。

日本の長期ゾーンも、似た物語を語っている。10月初めまでに投資家の間では、高市早苗首相の歳出計画が国の財政を悪化させかねないとの懸念が強まっていた。10月5日、30年債利回りは取引時間中の過去最高となる4.235%をつけ、2年債利回りは1.9%近辺にとどまっていた。9月18日に日銀が政策金利を1.25%に引き上げた際には、2人の政策委員が反対票を投じた。2人とも今年に入って高市首相が任命した委員で、いずれもリフレ派とみなされている。利上げは通常、その国の国債利回りと通貨を押し上げる。ところが今回は10年債利回りが低下し、円は下落した。エコノミストたちは、日銀がそれほどタカ派的な姿勢はとらないかもしれないことを示唆するものとして、票が割れたことを挙げた。4月に公表されたIMF独自の日本国債利回りの要因分解は、リスク補償と政策金利の上昇予想の両方を要因に挙げていた。

英国と日本の動きの背後にある懸念には、名前がある。国際決済銀行(BIS)は2023年、最も切実な懸念としてフィスカル・ドミナンス(財政支配)を挙げ、それを「財政上の制約のために金融政策が引き締めを行えない状況」と説明した。今回の出来事はそれを示してはいない。FRBも日銀も今年利上げしており、10月初めの時点で投資家はイングランド銀行もそれに続くと見ていた。債務が実際に変えるのは、市場の反応の激しさである。IMFによれば、債務が多いと市場金利は財政関連のニュースに敏感になり、米国では長期フォワード金利が政府債務の予測に対してより敏感になっている。大きな市場は、自らの問題を輸出しもする。「主要先進国では、財政規律の欠如の影響は国境で止まらない。世界のほかの地域へと広がっていく」と、IMFのロドリゴ・バルデスは10月14日に語った。

金利の上昇はどう予算に届くか

政府は、直近の入札の利回りを債務全体に払っているわけではない。払っているのは実効金利であり、まだ残っているすべての債務を混ぜ合わせたものだ。その中には2020年に1.4%で借りた分もあれば、2026年10月に5.6%で借りた分もある。固定利付債の場合、この混ざり具合は、古い債務が満期を迎えて借り換えられるにつれて、また新たな赤字がそのつど現在の金利で賄われるにつれて変わっていく。もっと速く動く債務もある。米国の変動利付債は毎週金利が改定され、物価連動債は物価が上がれば支払いが増える。そこから続く計算を、IMFは雪だるま効果と呼ぶ。実効金利が名目GDP成長率を上回ると、利払い以外の歳出をすべて税収で賄っていても、債務比率はひとりでに上昇する。利払いが新たな借り入れで賄われることになるからだ。それを止められるのはプライマリーバランス(基礎的財政収支)、つまり利払い前の財政収支である。金利と成長率の組み合わせごとに、債務比率を一定に保つプライマリーバランスが存在し、それより大きな赤字を出す政府は、比率が上がっていくのを目の当たりにすることになる。

世界全体が、まさにそのより大きな赤字を出している。IMFは2026年の世界のプライマリー赤字をGDPの約3.3%とみているが、今年世界の債務比率を安定させるには、これを約2.6%まで縮める必要がある。圧力は、新たに借りる部分でも強まっている。新規債務に払う金利がいまや予想名目成長率を上回る国が増えており、IMFは政府の資金調達にかかる実効的な平均コストが2021年の2.3%から2031年までに3.7%に上昇すると予測している。米国は完全稼働に近い状態で経済を回しながら、GDPの7〜8%に相当する赤字を出している。IMFは米国の利払い費が2031年にGDPの5.7%に達すると予測しており、これは同国最大の給付制度である社会保障年金(ソーシャル・セキュリティー)への支出予測とほぼ同じ規模である。

それがどれほどの速さで進むかは、その国がどれだけ長い期間で借りたかによる。日本は金利が安いときに長く借りた。平均償還期間が長いため、債務の実効金利はゆっくりとしか調整されてこなかった。IMFは4月、利払い費が成長率を下回り続けるとして、日本の債務比率が2025年から2031年までに約14パーセントポイント低下すると予測した。IMFは条件も添えている。この効果は、低コストの古い債務が満期を迎えてはるかに高い金利で借り換えられるにつれて薄れていく。そして利回りがすでに上昇しているため、見通しは悪化しうる。米国は逆の道をたどった。パンデミック以降、短期国債は連邦債務を5兆ドル近く増やし、平均償還期間を短くした。そのため、債務が借り換えの時期を迎える頻度は高くなっている。

量的緩和は、見かけの平均償還期間では見えないひねりを加える。中央銀行が長期国債を買うとき、その代金は準備預金で支払われ、中央銀行は銀行にその利息を払う義務を負う。政府の帳簿上では、債務は長期で安全に見える。だがBISが指摘するように、政府と中央銀行を合わせた公的部門全体は、実際には金利上昇に対してより敏感になっている。金利が上がれば中央銀行が準備預金に払う利息がすぐに増え、中央銀行が国庫に納める利益が削られるからである。

世界の政府債務は2025年にGDPの94%近くに達し、IMFは現在の軌道のままなら2029年までに100%に達するとみている。これまでこの水準に達したのは、第二次世界大戦の直後だけである。2019年以降のIMFの数字では、実績値の最高は2020年の97.4%だった。世界全体で、利払い費は4年間で世界のGDPの2%から3%近くへと増えた。各国政府が満期を迎えた債務を、新しい高い金利で借り換えたためである。

これはごく普通のことだ、という見方

過去の数十年が比較の材料になる。ニューヨーク連銀の推計では、1994年9月にモデルが当てはめた10年債利回りは7.68%、タームプレミアムは2.58ポイントだった。また10年債利回りは2007年6月に5.26%で引けたこともある。その物差しで測れば、10年債利回り5%は珍しいものではない。異常だったのは、終わったばかりの時期のほうである。2020年1月、14世紀までさかのぼって実質金利を再構成したポール・シュメルツィングによるイングランド銀行のスタッフ・ワーキングペーパーは、実質金利が「まもなく恒久的にマイナス圏に入る可能性がある」と示唆した。それは長期的な趨勢についての真剣な読みであり、予想がどれほど大きく振れていたかを物語っている。

実質利回りの上昇は、良い知らせを伴うこともある。利回りを押し上げる要因としてIMFが挙げる項目には、投資需要の強まりと、AIに関連した予想成長率の上昇も含まれており、FRBのマーケット・デスクは底堅い経済を見ていた。名目成長が速まれば分母が大きくなるので、債務の計算にも有利に働く。米国のデータは、インフレへのパニックも、買い手のストライキも示していない。

ただ、同じIMFのリストは、別の一文で締めくくられている。「しかし、財政のファンダメンタルズこそが中心にある」。新規債務の金利こそが、一本一本の債券を通じて実効金利に流れ込んでいくものであり、それはすでにより多くの国で予想成長率を上回っている。米国債市場にも変化が表れている。4月、バルデスは、米国債がかつて他の先進国の債務に対して享受していたプレミアムが縮小しつつあると指摘した。「これらは、市場がかつてほど楽観的ではない――かつてほど寛容ではない――ことの表れだ」と彼は述べた。借り入れコストの上昇によって、米政府が次のショックを吸収する余地は小さくなる。

2つの借り方

10月の入札の買い手にとって、8月発行の債券の利回りは2056年まで5.618%で固定された。財務省にとっても、債務のうちこの部分のコストは、FRBが次に何をしようと変わらない。それが、金利が高いときの借り方の1つである。高い対価を払い、その価格を固定してしまうのだ。

英国は逆の道を進んでいる。かつて長期ギルト債は、英国の借り入れの屋台骨だった。そのおかげで英国は主要国のなかで最も長い平均償還期間を持ち、金利上昇に対してある程度の備えがあった。それを買っていた国内の年金基金からの需要は、ほぼ消えてしまった。英国が3月に公表した資金調達計画では、2026/27年度のギルト債売却に占める15年超の通常ギルト債の割合が9.1%に引き下げられた。前年度の計画より4.3パーセントポイント低い。

借り入れを短期へと移しつつある英国では、債務のより多くがより早く市場に戻り、そのときの金利がどうであれ、その金利で借り換えられることになる。

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この記事の引用
Lena Martin. “豊かな国の政府はなぜ借り入れに多くを払うようになったのか、そして誰がその影響を受けるのか.” Eikleaf, 2026年10月24日, 更新 2026年10月25日. https://www.eikleaf.com/ja/why-rich-governments-are-paying-more-to-borrow-and-who-feels-it/

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メディア

米財務省ビル – Wikimedia Commons (写真:Rchuon24, CC BY-SA 3.0)

エクルズ・ビル – Board of Governors of the Federal Reserve System

イングランド銀行の入り口 – Wikimedia Commons (写真:The wub, CC BY-SA 4.0)

主な出典と参考文献

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